国・銀行主導の手形取引削減に中小の建設事業者はどう対応するべきか?

5年間で(2023年度までに)全国の手形交換枚数の約6割を電子的な方法に移行すること。」全国銀行協会が事務局となり国の中小企業庁などが参画する「手形・小切手機能の電子化に関する検討会」が2019年に提言を出しました。

2017年6月に安部内閣の下、閣議決定された「未来投資2017」で手形・小切手を使用した取引の見直し、またその電子化を検討することが言及されています。本検討会はその方針のもと2017年12月に発足した会です。

メガバンクはもちろん、政府機関も参画し、今まで中小企業間や下請け企業への支払いなどを中心に使用されてきた約束手形取引の見直しを進めていく方針です。

従来より、約束手形による取引が多いとされていた建設業界の企業は、今後この方針にどう対応していけばいいのか。本記事では建設業界の手形取引の現状を最新の統計調査をもとに分析した後、そのソリューションを紹介していきます。

 - 本記事でわかること -

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✓ 他業種と比較した建設業の手形取引の実態

✓ なぜ中小の建設業で手形取引がなくならないのか

✓ 建設業での手形取引削減の動き

✓ 中小建設業向け手形取引をなくす解決策

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全産業で減少の中、トップ3の多さを誇る建設業の手形取引

2019年度法人企業統計調査の結果をもとに筆者が作成

上図は2019年度の法人企業統計調査の結果(財務省実施)をもとに全産業(金融・保険業除く)の支払手形残高を示したものです。1990年前後のピーク時から、ものすごい勢いで手形取引が減少しているのが分かります。取引の電子化や金融の多角化などが進みあらゆる産業で約束手形による取引が減少しているのが分かります。全産業の手形残高が、ビーク時の約107兆円から2019年度は約20兆円まで減少しています。

そんな中、建設業は2019年度の調査で2兆円ほどの手形残高を記録し、製造業、卸売小売業に次いで第三位の手形残高の多さを有しています(全18業種)。もちろん、ピーク時からは手形取引は大きく減少していますが、依然として他の産業に比べると約束手形による取引が多い現状です。特に何層もの階層構造になっている建設業では2次請け、3次請けの中小建設事業者がかかわる取引において手形を利用するケースが多いです。

なぜ中小建設業の手形取引は減らないのか?

「手形・小切手の社会的コストの実態調査」をもとに筆者が作成

上図は2018年に全国銀行協会によって実施された「手形・小切手の社会的コストの実態調査」のヒアリング調査データにもとづき作成したものです。建設業の支払い側も受け取り側も多くの事業者が約束手形による取引をやめたがっているのが分かります。では、なぜ手形取引が今なお多く存在するのでしょうか。

 

「手形・小切手の社会的コストの実態調査」をもとに筆者が作成

建設事業者間での約束手形による取引をやめられない理由として受け取り側の多くが、支払い側が約束手形での取引を要求していると同調査で回答しています。一方支払い側は業界の商習慣を理由としたものや受け取り側が電子記録債権を利用していないなどの回答が目立ちます。建設業界全体としてまだまだ約束手形による取引文化が根強く残っている様子がうかがえます。

少しずつ出てきた建設業での手形廃止の動き

建設業界で少しずつ出てきた手形廃止や支払いサイトの短縮の動きを見ていきます。

建設会社の五洋建設は2017年10月より支払い手段を手形から現金へ移行しています。また今までの支払手形と電子記録債務をゼロにする方針も併せて発表しています。

また若築建設は下請け契約の支払いを全面的に2019年4月より現金化しています。またその他、大手の清水建設や西松建設も手形の廃止の方針まではいかないものの支払サイトの短縮を2018年、2019年にそれぞれ発表しています。こうした大手・中堅の動きは建設業における手形取引の現状を変える動きを加速させそうです。

また国も新型コロナウイルス感染症の影響をうけて、下請け企業への支払いに使用される約束手形の支払期限を現在の120日以内(繊維業は90日、その他の業種は120日)から60日以内に短縮させるよう検討しているという報道が出てきています。

中小の建設事業者が手形取引減少に対しとるべき対策は

「でんさい」(電子記録債務)を使用するのがまず一つ目の解決策です。「でんさい」は全国銀行協会100%出資の子会社、「でんさいネット」(※「全銀電子債権ネットワーク」の通称)が運営するサービスです。

簡単に表現すると従来の手形・売掛債権を電子化し、紙での取引で発生していた問題点を解決したものです。従来の手形取引で発生していた誤発送や郵送の手間が電子化された取引ではなくなります。また電子化されたことで「足がつく」ので記録をたどることによって不正や間違いが分かりやすくなります。

全国銀行協会は「でんさい」の利用を強く推奨しており、今後、利用事業者が大きく増える見込みです。

手形を使わず素早い現金化が可能な建設業特化の民間サービス

 

(株)ランドデータバンクのサービス資料より

「でんさい」に加えて、建設業特化の民間サービスを使う手もあります。それが(株)ランドデータバンクが提供するサービスです。

ランドデータバンクの立替決済サービスは建設業特化の金融プラットフォームです。本サービスを使用することで、建設会社は手形を使用しなくても、立替を受けることで、実際の支払は完工時まで発生しません。

また、資材会社や協力会社には、建設会社との取引の際に、素早く現金が支払われます。手形を使用せず、「支払時期の猶予」と「安心して素早い現金化」が可能な建設業特化のプラットフォームといえるでしょう。

また、なじみの取引先が本サービスを使用していなくても、ランドデータバンク側が説明に回り、新たな取引が成立するパターンも確立しています。

 

(株)ランドデータバンクのサービス資料はこちらから

 

サービス提供開始から2か月ほどで、中小の建設事業者を中心に支持を集め、会員社数は100社を突破しています。手形中心の取引を変えたい中小の建設事業者はぜひ検討してみてください。

以上、建設業界の手形を見てきました。中小の建設事業者を中心に多く利用されている約束手形による取引。今後、国や銀行の手形廃止の動きもあり、手形取引の減少が見込まれます。現在、手形の取引が主流な事業者は徐々に対策をとっていく必要があるでしょう。