電柱を地中化するとどうなるの? ~青い空と安全なまちづくりを実現!~

電柱を地中化するとどうなるの

弊社、株式会社ランドデータバンクは銀座通り沿いにオフィスを構えています。オフィスから少し歩けば銀座に行けるという好立地です。東京の東側、下町と呼ばれるエリアに住む私にとって、銀座はとても洗練された街で、なんだかヨーロッパに来た気分にすらなります。おしゃれな建物が多い、という理由もありますが、もしかすると「電柱が無い」「空をさえぎる電線もない」ということが大きな理由かもしれません。

国土交通省では、1986(昭和61)年度より無電柱化計画をもとに取り組みを始めました。2021(令和3)年度5月には新たな「無電柱化推進計画」を策定して、積極的な推進を図っています。しかし、2019(令和元)年度末現在、日本で一番無電柱化が進む東京都の電線地中化率でさえ42%にとどまっています。そこで今回は、無電柱化の議論の歴史的背景、メリット・デメリットや現状、また新しく策定された「無電柱化推進計画」について紹介します。

無電柱化の歴史

そもそも電柱とは、電気を通す高圧配電線・低圧配電線とインターネットや電話に使う通信線を各家庭に届けるために設置されたものですが、その歴史は古く今から150年ほど前、1869(明治2)年に横浜の役所と裁判所間の官用電信線をつなぐために設置された電柱が日本で最初のものと言われています。その後徐々に電柱・電線が増えるのですが、1890(明治23)年ごろから電柱が交通や美観の妨げになるのではないか、という議論がなされるようになります。電話・電灯の急速な普及に伴い、電線すべてを地中化する計画は一度頓挫したのですが、1921(大正10)年に東京市が幹線道路の全面舗装化に伴う都市内電力線の地中化を推進しはじめます。ただ、その後の不景気や戦時体制によりなかなか地中化は進展しませんでした。さらに、1945(昭和20)年、終戦を迎えた日本では、早く、かつ、安く電気を通すべく費用が掛かる地中配電ではなく電柱を使って電線を通す「架空線」が普及します。それでも、次の項目で挙げるようなメリットが無電柱化にはあることから、無電柱化は再び議論の俎上にあがり、1966(昭和41)年には銀座で無電柱化が実現します。その後、戦後復興から国が豊かになってきたことを契機に無電柱化に関する研究も盛んになり、1986(昭和61)年に国として施策を推進することとなったのです。

無電柱化のメリット・デメリット

無電柱化には景観を守るだけでなく、さまざまなメリットがあります。まずは道路の安全性を高める効果です。電柱をなくすことで歩道の有効幅員が広がり、通行空間の安全性が確保できたり、車が電柱に衝突する事故も防げたりします。また、竜巻や台風などが起きたときに電柱倒壊等による被害を防止することができます。2019(令和元)年、千葉県を中心に甚大な被害を及ぼした令和元年の台風15号では、1,996本の電柱が破壊ないしは倒壊したため、千葉県、神奈川県を中心に最大約93万戸で停電が発生しました。また、倒れた電柱で救急車両が通れなかったそうです。このように、無電柱化には様々なメリットがあります。

一方で、無電柱化にはデメリットもあります。たとえば地震が起きたとき、電柱が倒壊して救急車両が通れないことは防げますが、電線を地中化すると破損個所の特定に時間がかかり復旧に時間がかかります。また、電柱の設置に比べると金額と時間のコストがかかるというデメリットもあります。国土交通省によると、電線1kmを地中化しようとすると約5.3億円の整備費用が、また設計から舗装復旧工事の完了まで7年ほどかかるそうです。さらに、電線の管理者と道路の管理者が分かれているため、このコストをだれが負担するかわかりにくくなっている面もあります。これに対して東京都はコスト縮減の推進を図ることで無電柱化を推し進めています。たとえば、電線を地中に埋めるのではなく各建物の裏に配線することで電柱をなくすといった多様な整備手法を活用したり、新しい技術を活用したり、あるいは、発注方法そのものを工夫したりすることで、金額・費用両面のコストを削減しようとしているのです。

2021(令和3)年5月に策定された「無電柱化推進計画」のポイント

上記のようなデメリットもありますが、それでも電柱倒壊による停電や通信障害が長期間に及ばないようにするため、国土交通省では無電柱化を推進しています。そこで、今までの方針を引き継ぎ、国土交通省が今年度新たに「無電柱化推進計画」を策定しました。新設の電柱を増やさないようにすること、金額的・時間的コスト縮減を推進し事業のスピードアップを図ることを基本的な取り組み姿勢として、現地の目的や状況に応じて関係者が連携しながらさまざまな手法を活用して無電柱化を進めていくこととしています。そして、2025(令和7)年度までに①防災、②安全・円滑な交通確保、③景観形成・観光振興の3つの観点からそれぞれ目標を掲げて施策を実行し、新たに4,000kmの無電柱化に着手するとのことです。

無電柱化の現状と施策 ~東京都と茨城県の場合~

上記のような国の施策を受け、各都道府県も無電柱化に乗り出しています。2017(平成29)年度末現在、最も無電柱化率が高い東京都と無電柱化率が低い茨城県をピックアップして現状と施策をみてみましょう。
・東京都の場合
東京都は無電柱化の着手時期が早かった地域の一つで、昭和30年代から昭和60年代まで電力・通信需要が高い都心部において、電線管理者による電線の地中化が行われてきました。その後、東京都としても「電線地中化計画」を策定し整備を進めた結果、2019(令和元)年度末時点において整備対象をする2,328kmのうち42%の986kmについて電線地中化が完了したそうです。しかし、都内の道路延長の約9割を占める区市町村道の多くは、歩道が狭かったり、あるいはなかったりするため技術的な課題があり、また、事業主体となる区市町村の多くは無電柱化のための財政負担が大きく、経験や技術的ノウハウも少ないことから区市町村道の無電柱化は進んでいません。そのため、東京都として区市町村に対する財政的、技術的支援を強化しながら無電柱化を促進していこうとしています。そこで東京都では「無電柱化チャレンジ支援事業」として、財政的・技術的支援を区市町村に実施していて、これまでに45区市が都の財政支援を受け、無電柱化事業を実施しているそうです。
・茨城県の場合
国の電線類地中化計画に基づき、1986(昭和61)年から「茨城県無電柱化計画」を策定し電線類の地中化を進めてきていますが、設備コストなどの理由から無電柱化はあまり進んでおらず、2018(平成30)年度末現在、県にある道路の0.2%程度、約200kmしか地中化が進んでいません。そこで、2020(令和2)年3月に「茨城県無電柱化推進計画」を策定し無電柱化の促進を図ろうとしています。そこではまず、緊急輸送道路や景観の保全を図る必要がある道路など、県が今後10年間で優先的に進める道路を策定しました。事業の実施にあたっては、電線管理者や地元住民等と十分協議したうえで進めていくそうです。

最後に

ここまで無電柱化について時代背景やメリット・デメリット、また国土交通省が策定した「無電柱化推進計画」と自治体の取り組みについて紹介しました。この先どこまで無電柱化が進むのか、今後も注視する必要があるでしょう。

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(参考文献)

無電柱化の歴史:

https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/chicyuka/pdf04/08.pdf

無電柱化のための多様な整備方法:

https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000113.pdf

国土交通省 無電柱化推進計画について(令和3年5月25日):

https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/pdf/21-05.pdf

東京都無電柱化計画(改定)(2021年6月):

https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/content/000052901.pdf

茨城県無電柱化推進計画(2020年3月):

https://www.pref.ibaraki.jp/doboku/doiji/hoshu/02safe/documents/ibarakikenmudenntyuukasuisinkeikaku210331.pdf