卒FIT後の太陽光マーケット。脱炭素推進でどうなる?

再生エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)の施行で脚光を浴びた太陽光発電。2019年11月以降、買取期間満了に伴い、いわゆる卒FIT事業者が徐々に増加してきています。

従来の太陽光ビジネスは発電した太陽光電力を地域電力会社などに売却することで成立していましたが、FIT制度期間満了による1kWh当たりの売電価格の低下などから、今後の太陽光ビジネスは一筋縄ではいかなくなりそうです。

しかし、太陽光発電事業者への追い風となる出来事が重なり、今後ますますマーケットが拡大するという見方もあります。そこで本記事では、ここ10年の太陽光マーケットの推移を見たのち、今後の太陽光マーケットに拡大をもたらす3つの影響について述べていきたいと思います。

 

2010年代の太陽光マーケットの推移

国際エネルギー機関によると、日本の太陽光発電による発電量は以下の図のようになっています。2019年の発電量(74,114GWh)は2010年(3,543GWh)の約21倍にものぼり、FIT制度の影響が大きく出ていることが伺えます。

(国際エネルギー機関のデータより、筆者作成)

またFIT制度による価格調整に加え、SDGsやESG投資などの観点から企業が再生可能エネルギー分野への投資に興味を持ち始めたことも大きいでしょう。別業種から参入し太陽光発電所を所有する例もここ10年で多く出てきました。太陽光発電の気勢は今後もこの波に乗り、マーケットは更に拡大していくと予測されます。

政府の「2050年カーボンニュートラル」による太陽光発電マーケットの伸長

2020年10月、日本政府は菅首相の下、2050年までに炭素排出量を実質ゼロにする宣言を出しました。政府よると、温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の脱炭素は大前提であり、再生可能エネルギーを極力導入すると示唆されています。

下の図は2010年から2019年までの各部門の発電量の比較です。原子力発電減少の負担量を上乗せした影響で火力発電の割合は依然として高く推移していることがわかります。

(図、環境エネルギー政策研究所データより筆者作成)

一方、太陽光発電の発電量は、2010年では0.3%だったものが2019年には6.7%と約22倍となっておりマーケットが拡大していることが分かります。急速に発電方法のシフトがなされているものの、火力発電の量を大幅に減らすにはまだ至っていません。

 

よって現状8割ほどの発電量を占める火力発電を再生可能エネルギーに変える動きが今後ますます強まっていき、マーケットが拡大することが予想されます。

 

また税制も改正され、カーボンニュートラルへの設備投資に対する減税措置が明文化されました。具体的には、規定事項を満たす設備の取得をした場合、「取得価額の 50%の特別償却とその取得価額の5%(温室効果ガス の削減に著しく資するものにあっては、10%)の税額控除との選択適用ができる」ようになりました。

例えば特別償却を選択、減価償却期間20年(定率法)、投資額1億円の設備を取得したとしましょう。この場合、損益計算書の費用欄に減価償却費として500万円/年を記載する他、初年度のみ1億×0.5=1000万円を特別償却として費用計上できます。そのため効果は短いですが有効な節税対策となるでしょう。(参考資料はこちら

 

太陽光発電の発電コスト低下によるマーケットの変化

太陽光発電のブームが到来してから約10年。平均費用の低下により太陽光システムの設置費用が年々低下しています。

下図の2010年から2019年の1kWパネル価格の推移からも分かる通り、ここ10年で住宅利用では約50万円、商業利用では約32万円の価格低下がみられます。

1,000kW以上のメガソーラー発電事業者であれば、2012年では52.3億円だったものが2019年では19.8億円ほどでパネルを取得できる計算になります。また主に個人利用で使われる4kWほどのパネルだと、2010年よりも200万円ほど安い、約90万円で取得可能です。

 

(IRENAのデータより筆者作成, 1$=\100換算)

以前と比べ導入コストが減少し、さらに上記で述べた補助金なども加わるため、他の再生可能エネルギー事業と比べると参入しやすいのかもしれません。(例として洋上風力発電事業の可能性も最近叫ばれていますが、高い導入コストがネックとなり撤退案件化されている事例も報道されています)

 

発送電分離による太陽光発電マーケット伸長の可能性

 

2016年4月の小売り部門の完全電力自由化に加え、送配電部門の切り分け(発送電分離)が2020年4月に行われました。発送電分離とは、送配電網を持つ旧一般電力会社の発電部門と送電部門を切り離し、送配電網の公平な利用を進める狙いがあります。

 

内容として、送配電部門の会計を他部門の会計から分離する会計分離や、送配電部門全体を別会社化する法的分離などが挙げられます。会計分離により送配電部門への料金支払などの条件について、他の電気事業者との間での公平性が向上します。加えて法的分離により各事業部門の行為、会計、従業員などを明確に区分できる可能性があります。

各発電事業者は、生産した電力を小売り業者に送る際、託送料金というものを送配電網を管理している企業(大体が旧一般電力会社の子会社)に支払う必要があります。その料金が透明化し、どの企業も公平に利用できるようになると予想されるため、今後の新たに太陽光発電事業を行う事業主の方にとっては追い風になることでしょう。

また近年注目されているESG投資などから、環境に配慮した持続可能な発展に貢献していくことは今後、企業のステータスとなるでしょう。実際にビルや工場などに太陽光パネルを設置して、自家消費している企業も多く存在しています。例えば京セラ。3階以上の南側壁面に1,392枚、屋上に504枚の太陽電池モジュールを設置し、年間約96tの二酸化炭素排出を抑制しています。日本人1人当たり年約8.9tを排出しているので、約10人分もの二酸化炭素排出量を吸収している計算になりますね。

こうした動きが次第に高まると推測すると、太陽光発電事業者だけでなく太陽光パネル設置事業者の需要も拡大太陽光発電のマーケットが大きく成長する可能性があります。今後の動向に注目です。

 

以上、卒FIT後の太陽光発電のマーケットが伸びる理由についてご紹介しました。

政府の後押しや電力マーケットの仕組みの変化は、新たに発電事業を始める事業者の方にとって朗報だったのではないでしょうか。再生エネルギー問題は世界規模での取り組みです。将来的に普及率が増加するからこそ、マーケットが発展する可能性が充分あります。

カーボン0を目指す時代に突入した今、環境に配慮することがより一層重要になるでしょう。